ヘルマン・ヘッセ「デミアン」を読みました。

高校生の時に本を月に一回渡されて読んで感想を書くというつら~い課題があったんですが、その時に「車輪の下」が最初の一冊目で、

まじめに書かないといけないと思っていたので、すごく読みづらかったけど何とか読んだ記憶があります。

それ以来のヘルマン・ヘッセです。

ちなみに「車輪の下」はほとんど覚えてません。。その時も少年って大変だなと思ったような気はしてます。

だから、今回も読むのが大変かと思いましたが、意外と主人公ではないデミアンが出てきてからは、一気に読みました。

なぜ「デミアン」を読もうと思ったかは、BTSの有名な「Blood Sweat&Tears」のMVを見て、ちょっと気になったからなんです。

そのMVの解説に「デミアン」をモチーフにしたとあったので、興味を持ちました。

このMV自体、謎が多くていろんな人が解説もしてます。

で、読んでみたところ確かに「デミアン」で描かれているモチーフが散りばめられていると思いました。

この小説とMVとの関連については、解釈の仕方がそれぞれあると思うので、そっとしておきたいと思います。

 

 

さて、シンプルに「デミアン」について感じたことを書きたいと思います。

少年が大人へと心が成長する過程の様子が詳しく書かれていました。

おそらくヘッセの体験したことに近いのだと思いますが。。

時代的には、第一次世界大戦中に書かれたそうで、当時はヘッセの名を伏せて発表したとのことでした。

そうせざるを得なかったのは、当時の文明批判が入っていたからのようです。

そして、その批判は今の時代にも通じるもので、わたしは共感しながら読みました。

でも、キリスト教ということを深く知らないことにはちょっと理解が難しいと感じる部分もありました。

 

人間における善と悪についての苦悩と、本当の自己を発見することの難しさを少年の成長物語として描いてました。

本当の自己にたどり着くための、その道しるべのような存在がデミアンです。

なりたいものになる(パイロットになると医者になるとか)というような夢を持つということだけではなく(それはたぶんなろうと思えばなれるからだと思いますが、)

それよりも、どう生きたいのか(どういう態度でどんな意志を持って生きるのかといった意味)という根本的な問題を深く考えろと言っているように思えました。

つまりは「自分自身になれ」と言ってるのだと思いますが。。

デミアンのあとに出てくるピストーリウスもまた主人公の導き手として登場します。そして、その出会いと別れによって考えたことで悟ります。

抜粋してみます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここで、突然鋭い炎のように一つの悟りが私を焼いたー各人にそれぞれ一つの役目が存在するが,誰にとっても、自分で選んだり書き改めたり任意に管理してよいような役目は存在しないと悟ったのだ。

新しい神々を欲するのは誤りだった。世界になんらかあるものを与えようと欲するのは完全に誤りだった。

目覚めた人間にとっては、自分自身をさがし、自己の腹を固め、どこに達しようと意に介せず、自己の道をさぐって進むという一事以外に全然何らの義務も存しなかったーそのことは私の心を深く揺り動かした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピストーリウスと離れた後、また再会したデミアンを含め、その母親と自己の道を探求しようとする人たちと主人公は親交を深めていきます。そして、その道を探求している人たちには「しるしがある」と表現し、主人公は自分にもそのしるしがあると自覚します。

また、その道を行くにはそれぞれが孤独でなければ進めないと話す場面もあります。

自分自身になるということの難しさ、そこに至るまでの激しい葛藤のようなものを描き出していて、非常に引き込まれて読みました。

 

人間界の「善」と「悪」の間で、「悪」に振り回され苦悶し、「愛」に目覚めることによって自分自身になっていくという物語かと思ったのですが、このお話では「愛」というよりそれが「恋」という形で出てきます。

また「悪」がなければ、本当の自分に気が付かないということも含まれているように思いました。

それで、以前読んだ河合隼雄著の「子どもと悪」を思い出しました。

抜粋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大人になって、自分の子ども時代を振り返ってみると、自立の契機として何らかの意味で「悪」が関連していたと気づく人は多いのではないだろうか。。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

確かに、、そう考えるとわかる気がする。。

単に少年の成長物語というより、人間が本当の自己を獲得していく物語で、ヘッセ自身の苦悩が書かれているのかなと思いました。

 

 

短いお話ですが、深いことが書かれていると思いました。

たぶん、何度か読み返すと思います。(翻訳物は、ちょっとわかりにくいということもあるので。。)

主人公のシンクレールは、その後戦争に行き、どうなったか、、謎のまま終わるところがまた余韻を残して良かったです。

 

かなり考えてしまったので、まとまりのない感想かもしれないですが、、読んでみて良かったと思いました。

いつか、誰かと感想を語り合いたい本の一冊です。

 

 

では、このへんで。

読んでくださって、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー :

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !!