先日、三鷹市美術館にて開催されている合田佐和子展に行ってきました。
幼少期の作品から年代順に網羅されています。
大変見ごたえのある展示でした。
感想を備忘録として残しますね。
初期の作品は立体造形が多くかなり個性的でドロドロした雰囲気がありますが、時代背景もあったのかと思ったのと若さならではの感性かと思いました。
油絵を始めたのは、母の若いときの写真を見て描いてほしいと父に頼まれて描いたことがきっかけだったそうで、その絵がいい感じに描けたことで油絵制作に入っていったようです。
そのあたりの話は興味深く、初期の油絵作品は色調は暗いものの勢いよく描いている感じがしました。
なんでも暗い色調になったのは画材屋さんで油絵の描き方をざっくり聞いて、白黒と3原色のみの絵の具を買ったそうですが、それは3原色あればすべての色が作れると思っていたとのことです。
でもそれがまた独特の色調で、センスがあったんだと思いました。
デザイン科だったのでそれまでは油絵を描いたことがなかったそうですが、いきなり100号を描いたのが母らしいと娘さんは語っていました。
寺山修二や唐十三の演劇のポスターも多く手掛けていたようです。
ハリウッドスターを描いた絵、特にデートリッヒは有名かと思いますが、原画を見ることが出来て良かったです。
台所で描いていたため、後ろに下がって確認できず歪んだ部分のままなところなどかえって個性になったとか、、それもセンスですね。
エジプトに滞在して帰国してからの作品は透明感があってとても美しくて好きです。
色も明るくなっていて、独特の夢のような画面で、特に瞳に惹きつけられていたことがよくわかりました。
カメラに凝った時期もあったようで、レンズを通してみた世界に興味があったそうです。
わたしはビー玉を覗くようなワクワク感みたいなものを感じました。
確か十数年前に朝日新聞で連載されていた中上健次の小説「軽蔑」の挿絵を描いていた時からなぜかずっと気になっていた芸術家だったのですが、もしかしたらその前から名前は知っていたような気もしてます。
たぶんファッション雑誌などで取り上げられることもあったようにと思うので。(うろ覚えですが、、)
挿絵は瞳のみの絵で大変印象に残っていますが、その鉛筆画も今回見ることが出来ました。
原画を見たのははじめてだったのですが、とにかく創作せずにはいられなかった人という感じがしました。
それとわたしが特に興味を惹かれたのが写真を見て描いているというところでした。
デザイン科出身ということなので、写真を見て描くことやスターを描くことにあまり抵抗がなかったような気がしました。(なんとなく)
写真を見て描くこと云々というより、作家のフィルターを通して描いているので、そこに明らかに作品として独立した個性を感じるかどうかということがやはり大切なんだと改めて感じました。
ビデオで娘さん(合田ノブヨさん)が語るエピソードも興味深く聞きました。
写真を見ながらのお話だったのですが、子育てしつつの日常を送りながらまるで違う耽美な世界を描いてたことや当時の暮らしぶりがうかがえるお話でした。
Twitterに投稿されていたのですが、語れない話もいっぱいあるそうで。。
若いときから注目され女性の芸術家として大変な面もあったのではないかと想像したりしますが、それも楽しみつつすごいバイタリティーで生き抜いたように感じました。
まさに自分を生き切った人という感じでしょうか。。
そして、このフライヤーの文言がすべてを言い表している気がします。
「帰る途もつもりもない」
合田佐和子展の素晴らしさが少しでも伝わればと思います。
良い刺激をたくさん頂けましたので。。
拙い長文を読んでくださり、ありがとうございました。
3月26日まで開催されています。お勧めの展覧会です!